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1. 栄養シグナルと寿命・老化のメカニズム
飢餓や低栄養等の栄養環境は、生命の存続を脅かす深刻な状況です。そのような環境に対して生物は、体内の代謝を変化させることで適応してきました。実際、食餌制限によって寿命が延長する事が酵母からマウスに至る広範な生物種で報告されており、そこに普遍的な生存戦略が示唆されています。我々は、飢餓・低栄養や過栄養などの栄養状態の変化が生命の寿命・老化を制御することに興味を持ち、その分子メカニズムの解明を目的に研究を行っています。
線虫 (C. elegans) は体長1㎜ほどで約1,000個の体細胞からなる最もシンプルな多細胞モデル動物です。平均寿命が2週間程度であり、線虫の遺伝学から得られた知見はヒトの遺伝子機能や疾患発症の理解に大いに貢献してきた実績を持っています。遺伝学解析が容易であることから寿命・老化研究にもよく用いられてきました(図1)。我々はこのモデル生物・線虫を用いて、栄養シグナルが制御する寿命・老化のメカニズムを研究しています(図2)。そこで得られた成果を、マウスにて検証・解析し、将来的には我々の健康にフィードバックすることを目指しています。
- Daitoku H, Kaneko Y, Yoshimochi K, Matsumoto K, Araoi S, Sakamaki J, Takahashi Y, and Fukamizu A.
Non-transcriptional function of FOXO1/DAF-16 contributes to translesion DNA synthesis.
Mol. Cell. Biol. epub ahead of print (2016) - Tamiya H., Hirota K., Takahashi Y., Daitoku H., Kaneko Y., Sakuta G., Iizuka K., Watanabe S., Ishii N. and Fukamizu A.
Conserved SAMS function in regulating egg-laying in C. elegans
J. Recept. Signal. Transduct. 33, 56-62 (2013) - Takahashi Y., Daitoku H., Hirota K., Tamiya H., Yokoyama A., Kako K., Nagashima Y.,
Nakamura A., Shimada T., Watanabe S., Yamagata K., Yasuda K., Ishii N. and Fukamizu A.
Asymmetric arginine dimethylation determines life span in C. elegans by regulating forkhead transcription factor DAF-16
Cell Metab. 13, 505-516 (2011) - Takahashi Y., Daitoku H., Yokoyama A., Nakayama K., Kim JD. and Fukamizu A.
The C. elegans PRMT-3 possesses a type III protein arginine methyltransferase activity
J. Recept. Signal. Transduct. 31, 168-172 (2011)