Stable cell line の樹立(大徳 浩照)

 

培養細胞に遺伝子発現ベクターを導入し、薬剤耐性マーカーによる選択圧をかけることで定常発現株を樹立する。また、転写因子の認識配列や標的遺伝子プロモーター領域を含むレポータープラスミドを組み込むことで、クロマチン構造を有するDNAに対する転写因子の作用を検討することもできる。

<はじめに>
 Stable cell line の樹立に当たっては、必ずしも高い遺伝子導入効率は求められないが、染色体に挿入される確率を高めるために環状のプラスミドを制限酵素消化で直鎖状にし、精製したものを用いる。遺伝子導入試薬は、当研究室では主にFuGENE6を用いている。
薬剤耐性マーカーはneoR (ネオマイシン耐性遺伝子) が一般的であり、多くの哺乳類細胞発現ベクターに組み込まれている。neoR を発現しないプラスミド (pRL/luciferaseなど)を導入する場合は、neoR を有する空ベクター(pcDNA3など)と混合してトランスフェクションすればよい。このとき、量比はpRL : pcDNA3 = 10~20 : 1にする。
薬剤はGeneticin (G418 sulfate; GIBCO) を使用する。細胞によりG418に対する感受性が異なるので、あらかじめ10% confluentな細胞を用意し、G418の濃度を200~1000 ug/mlの間で何点かとって培養し、細胞が7日程度で死滅する濃度を決定しておく。ちなみにHEK293細胞では400ug/mlでO.K.だった。
導入された遺伝子のコピー数と薬剤耐性は比例するため、理論的には選択マーカーの濃度を上げることよりコピー数の多い株の取得が可能であるが、導入遺伝子の毒性が問題になることもある。

<方法>
遺伝子の導入と細胞の選択
 Day 0 HEK293 5x10の5乗 cells/DMEM+10% FBS/10 cm dish

 Day 1 FuGENE6による遺伝子の導入
37℃, CO
2 incubator, 48 hrs
 Day 3 ほぼ confluent にまで増殖した細胞を1/20に希釈し、dishにまく。
37℃, CO
2 incubator, 12~16 hrs
 Day 4 G418を培地に終濃度400 ug/mlになるよう添加する。

培地交換 + G418 /3~5日おきに

コロニーの形成

コロニーの単離
 G418耐性コロニーが直径3~5 mm になったら単離する。通常、トランスフェクション後、2~3週間程度かかる。単離とはすなわちdish内に点在する独立したコロニーを24 well plate などに継代してクローン化することである。以下に代表的な方法を示す。

シリンダーを用いる方法:ステンレス製のシリンダー(直径5 mm)の底にワセリンを塗り、コロニーを囲うようにdishに置く。
培養上清を吸引後、キャップで目的のコロニーを周囲の細胞と隔離させ、内側にトリプシン溶液を適量流し込み、ピペッティングにより細胞を剥離させ回収する。回収した細胞は24ウェルのプレートなどでスモールスケールから徐々にスケールアップさせてゆく。