組織標本はマウス解剖などによって得られた組織を、顕微鏡での観察に適するように標本とするものであり、通常は固定、包埋、薄切、染色の過程を経て作製される。
自分の目的とするものによって凍結包埋かパラフィン包埋、固定法などを選択しなければならない。凍結切片は他章で紹介されているのでパラフィン包埋の方法について述べる。

● フォルマリン固定
摘出した臓器の固定には10%緩衝フォルマリン固定が第一選択となることが多い。HE染色などの形態観察には永久的に保存可能、免疫染色などで抗原性保持の為には以下の時間で行うと良い。
小さい臓器の場合には室温で最低6時間固定、最高では4℃の場合でも48時間(理想的には8~10時間)固定。次にPBSで洗浄して70%エタノールへ移す(保存は1週間以内)。
wholeなどの大きなサンプルの場合には24~48時間の固定が必要である(固定力の強いフォルマリンでも1mm/h程度)。次に1日PBSで洗浄して70%エタノールへ(6~12時間で、もう一度70%エタノールを変える)。エタノールに変えたら室温でよい。
一般染色であれば上記の固定で良いが、免疫染色の場合には上記の10%緩衝フォルマリンの他に、4%緩衝パラフォルムアルデヒド、カルノア固定などさまざまなものがあるので、条件がわからない抗体の場合には条件検討を行い抗体によって選ばなければならない。

● 病理に出す場合
固定の後は包埋、薄切、一般染色は筑波大学医学専門学群棟6階標本作製室で受け付けている。所定の用紙に記入して提出する。

●自分で包埋する場合のプロトコール
臓器を固定液

PBS wash 4 ℃ 1h

70% EtOH   2h(止められる)
↓         (in situの場合にはDEPC水使用)
80% EtOH   2h

90% EtOH   2h

99.5% EtOH   2h

99.5% EtOH   2h

100% EtOH   2h

100% EtOH   o/n

キシレン  4 ℃  2h

キシレン  4 ℃  2h

キシレン  4 ℃  2h

キシレン  4 ℃  o/n

パラフィン  60 ℃   2h

パラフィン  60 ℃   2h

パラフィン  60 ℃   2h

パラフィン  60 ℃   2h

包埋

薄切:RNAスペースのミクロトームで薄切する

参考文献
新染色法のすべて -月刊Medical technology別冊-    医歯薬出版
酵素抗体法 改訂4版   学際企画
http://icg.cpmc.columbia.edu/cattoretti/Protocol/MousePathology/mainPageMousePath.html.
http://ccm.ucdavis.edu/tgmouse/