SYBR Green I を用いたRealtime RT-PCR (Roche Light Cycler)(杉浦 明子)
Light Cycler を使って解析をする前に
○使用するキットが非常に高価(1サンプルあたり376円)であるので、本当に調べる必要のあるサンプルを厳選する。また、1連の実験に必要な経費が2万円を超える場合には先生に許可を求める。
○ プライマーが使えるものであるかどうか条件検討等を念入りにする
1. 条件検討
PCRにて、設計したプライマーセットの効率、特異性、最適温度をしらべる
▽ 産物が十分高効率に生じるか?
▽ 目的の大きさの産物のみが生じるか?
▽ ネガコンやテンプレートなしでは産物が生じないか?
▽ 最も効率のよい温度条件は?
PCRにて解析に適したプライマーであることが確認されたものは、Light Cyclerを用いて更に条件検討する(PCRとは最適条件が異なる場合がある)
▽ 始める前の注意事項
・ 用いるcDNAはあらかじめRT-PCRを行い、RT反応が効率よく行われているかを確認する
・ 遺伝子発現解析を行う際、発現の有無が不明である場合はいきなりRealtime RT-PCRを行うのではなくあらかじめRT-PCR等で発現状況を確認しておく
・ 効率はCrossing pointのサイクル数で判断する。また、特異性は融解曲線のピークが予想通りのものが一つだけ生じていること、産物を電気泳動することにより予想通りの大きさの産物が生じていること、さらにネガコンやテンプレートなしでは産物が生じないか効率が非常に悪いことを判断条件とする。
▽ MgCl2濃度を検討する(2,3,4,5mMのうち最も高効率で特異的な条件)
▽ 温度条件を検討する(最も高効率で特異的な条件)
▽ 検量線の範囲を検討する(5倍希釈系列で5点 + no template で検量線を作成し、直線性の成り立つ範囲を調べる。no templateとの比較により最大希釈倍率を確認する)
実際に解析を行う場合のunknown sampleは、検量線の成り立つ範囲の真ん中の希釈率を適用する。また、検量線に用いたサンプルは更にunknownとして別にサンプルをつくる必要はない。
2. プログラミング
LightCycler3Frontを開く
[Run]ボタンを押す
ダイアログボックスが現れ、セルフテストを実行するか問われる
その日最初のランのみセルフテストを実行する
プロトコルを作成(New experiment)または呼び出す(Open experiment)
基本的なPCRプログラムは以下の通り
[95℃, 10sec → 60℃, 10sec → 72℃, 6sec]
サンプルリストを作成する(Edit Samples)
・ サンプル数をMaximum Positionに入力
・ サンプル名、タイプ、濃度(スタンダードのみ)を入力
3. サンプルの調製
MgCl2最終濃度 2mM 3mM 4mM 5mM
Template cDNA (1~5ngぐらい) 2~5 2~5 2~5 2~5
25mM MgCl2 0.8 1.6 2.4 3.2
forward primer (10pmol/ul) 1 1 1 1
reverse primer (10pmol/ul) 1 1 1 1
10×LC-DNA Master 2 2 2 2
H20 x x x x
20 20 20 20 ul
必要な分のキャピラリをホルダーにセットする
Template以外の試薬を混合し、マスターミックスをつくる
マスターミックスをキャピラリにアプライする
Templateをキャピラリにアプライする
ピンセットでフタをする
カルーセルにキャピラリをしっかりセットする
カルーセルを遠心し、サンプルを落とす
4. ラン
カルーセルを本体にセットする
リッドを閉じる
[Run]ボタンを押す
ファイル名を保存する
サンプル数がカウントされ、ランがはじまる
5. データの解析
[Data Analysis]ボタンを押し、開くファイルを選択する
[Select a Program]で解析したいプログラムを選ぶ(定量分析もしくは解離曲線)
定量分析の場合、Fit Points 法を選択し、Noise Bandの設定を行う
[Minimize Error]ボタンを押し、エラーの少ない検量線を作成する
Crossing lineが各グラフと交点を持つように微調整する
・検量線の種類が複数ある場合は、選択しているものを検量線に用いた値が表示される
解離曲線の場合
・ピークの温度はそれぞれの産物固有であることから、ピークの数は産物の種類を表すこととなるので、解析したサンプルのピークは予想通りのものが1つだけ生じているかどうか確認する。そうでない場合、算出された値は信用できないこととなる。
・同じ産物でもMgCl2濃度で多少ピークの位置が異なる場合がある
* 機器の細かい操作方法に関しては、ライトサイクラーに付属するマニュアルを参考にすること。