In vitro translation (松崎 仁美)

 

 タンパク質の機能を研究する上で、対象タンパク質の合成は必須の技術である。しかし、生細胞を用いた発現系では、細胞にとっては異物である外来タンパク質を強制的に発現させるため、生存するための細胞機能の維持に影響を与える可能性などの問題がある。そこで有用なのが、タンパク質合成反応に必要な各種因子(リボソーム、伸長因子など)を含んだ細胞の抽出液を用いて試験管内でタンパク質を合成させる、無細胞タンパク質合成系である。この方法では、タンパク質を発現するという本来の目的のみに系を特化できるため、制約を受けにくく、系を人為的に改変することが容易である、などの利点がある。一方で、合成量が低い、高価である、などの欠点もある。

原理
転写反応と翻訳反応を一つのチューブ内で共役させ、タンパク質を合成する。
エッペンドルフチューブなどで
・細胞抽出液
・タンパク質合成に必要な基質類(ヌクレオチドやアミノ酸)
・緩衝液や塩類
・鋳型 DNA
・RNA ポリメラーゼ
を混合し、適切な温度に加温すると、転写・翻訳反応がおこり、鋳型にコードされたタンパク質が合成される。
真核生物由来の系の場合、ウサギ網状赤血球やコムギ胚芽の細胞抽出液が良く使われる(ここでは網状赤血球の細胞抽出液を使用している)。
放射線同位体標識されたアミノ酸を用いれば、放射線標識されたタンパク質を得ることができる。

準備
・TNT Coupled Reticulocyte Lysate Sytem (Premega)
・ribonuclease inhibitor
・nuclease-free H
2O (DEPC- H2O でも可)
・radiolabeled amino acid
EXPRE
35S35S [35S] Protein Labeling Mix (PerkinElmer)
(= 73% L-[
35S] methionine and 22% L-[35S] cysteine)
・鋳型プラスミド DNA
・G-25 カラム

操作
(基本的には、Promega のキットに添付されている説明書に従う)
鋳型 DNA の準備
↓T7、T3 または SP6 プロモーターをもつベクターに目的タンパク質の cDNA をクローニングする
↓c. c. c. プラスミドを調製する

in vitro transcription/translation reaction ([35S] methionine で標識する場合)
* 手袋を着用する(RNase や Ca2+ のコンタミを防ぐため)*1
* 操作は 4 ℃ または on ice で行う
* Reticulocyte Lysate は予め 12.5ul/tube で分注し(凍結融解の繰り返しを避けるため)、-80 ℃ で保存する
↓以下の反応系で各試薬(= [35S] methionine以外)を混ぜる(on ice)*2, 3

TNT Reticulocyte Lysate              12.5ul
TNT Reaction Buffer                 1ul
TNT RNA polymerase (T7, T3 or SP6)        0.5ul
Amino Acid Mixture, Minus Methionine (1 mM)    0.5ul
ribonuclease inhibitor (20 unit)           0.5ul
DNA template (0.1~1ug/ul)            0.5ul
nuclease-Free H
2O                 7.5ul

↓on ice の状態で RI へ行く
↓[35S] methionine (10 mCi/ml) 2ul を加え (total 25ul になる)、ピペッティングで穏やかに混ぜる*4, 5
↓30 ℃ のヒートブロックで 60~90 分間反応する
↓G-25 カラムに通す(フリーのラベルの除去)
↓この後の実験に使うバッファー(例: GST-pull down assay の binding buffer)100ul でカラムを 2 回洗う(溶出されたものもサンプルに加える)
*1. Ca2+ は lysate 内在性の RNA を分解するために用いていた micrococcal nuclease を再活性化してしまう恐れがある。
*2. キットに添付されているプロトコールの半分の反応系になっている。この 25ul 系の反応から通常 GST-pull down assay の約 4 検体分の標識タンパク質が合成できる。
*3. 試薬は-80 ℃ で保存している(酵素類は -20 ℃)。
Reticulocyte lysateは冷凍庫から出したら手で暖めて素早く溶かし、すぐに on ice に置く。
酵素類は冷凍庫から出したらすぐに on ice に置く。
他の試薬類は室温で溶かし、on ice に置く。
*4. 汚染には十分注意する。
*5. 新たに購入したラベルは 4 本に分注し、-80 ℃ で保存する。

◆ 補足
・対照として、鋳型 DNA を加えない反応も行うと良い。バックグラウンドのラベルの取り込みを調べることができる。
・放射線標識したアミノ酸を用いないときは、キット中の Amino Acid Mixture Minus Methionine と Amino Acid Mixture Minus Leucine の両方を、25ul の反応系あたり各 0.5ul 加える(水で総量を25ul にあわせる)。