タンパク質濃縮法 (浅田 幸江)
タンパク質の濃縮法は多種多様な方法がある。その中から用途により最適な方法を選択する。当研究室では、主にGST融合タンパク質の大量調整後グルタチオンビーズから溶出・透析処理により希釈されたタンパク溶液の濃度を高める為濃縮を行っている。今回紹介する方法は、(1)大量(2)少量のサンプルの場合、のそれぞれにおいての濃縮法を紹介する。
方法
以下の操作は4℃で行う
(1) 大量にサンプルがある場合
目的のタンパク質が大量に調整可能で、かつ濃縮によるサンプルの損失があってもそれ以上に充分量タンパク質がある場合この方法を選択する。
還元型グルタチオンにてグルタチオンビーズよりGST融合タンパク質を溶出後、多孔性セルロース膜にて透析
透析後、透析チューブにサンプルを入れた状態でチューブの周りにAquacide IIを適当量被せる(チューブをAquacide IIの中に埋没させる)
1時間から一晩静置する(途中様子を見ながら行う。Aquacide IIは水分を吸収すると固まるのでチューブの周りの固まったAquacide IIを取り除きチューブ内に残存するバッファー量を確認する)。
適当量までバッファーが減った後チューブ内のサンプルを回収する
(2) サンプルが少量の場合
GSTに融合させるタンパクにより大量発現が困難なタンパク質もあり、大量培養しても還元型グルタチオンで溶出されるタンパク質が少なく、濃縮時のタンパクの損失を最小限に抑えたい場合こちらを選択する。
この場合、一定サイズ以下の分子を通す限外濾過膜を用い濃縮を行う。
当研究室では限外濾過膜がエッペンチューブにセットできる遠心式の限外濾過膜を使用している。この方法を用いると数mlのサンプルを数mlの容量まで落とすことが可能である。限外濾過膜使用の利点はサンプルの損失が少なく濃縮が可能なことである。欠点は限外濾過膜が高価であること、一定のサイズの分子量を分けることができるがその分離は正確ではないことが挙げられる。
溶出したサンプルを限外濾過膜が付いたサンプルカップに入れる(チップなどで膜に触れると傷ができサンプルが損失する原因になるので注意する)
遠心する(製品の説明書に最大gが記載されているのでそれに従う)
ある程度までサンプルの容量が減った後サンプルカップ内に残っている溶液を回収する(一回で入りきらない場合は数回に分けて容量が減ったらサンプルを足す。)
注意点
発売されている限外濾過膜はタンパク質の吸着性が低いが全く吸着されないことはないので回収時サンプルカップをとも洗いする。回収時のサンプルにSDSを加えてもよい場合は0.1% SDSを加えたバッファーでとも洗いすると膜に吸着されているタンパク質も効率よく回収することができる。
試薬・器具
・Aquacide II (CALBIOCHEM / code NO. 17851)
・限外濾過膜
microcon (エッペンサイズ)・centricon (15 ml チューブサイズ) (Millipore)