抗体作成方法 (伊達 昌一)
ポリクローナル抗体作成に関しては、特異性の高い抗体を確実に作成するプロトコルはない。これは、抗原部位のタンパク表面に来る抗体の作られやすいアミノ酸配列を確実に判定できない、またまた免役する動物の個体差によるためである。抗体を作成する場合、自身でウサギに免疫を行い、抗血清を得るか、同様の作業を外注することになる。当研究室ではこれまでに抗原をGST fusion protein として作成し、外注により抗血清を得ている。外注の値段、サービスは各企業により様々である。
抗体作成過程
1. 抗原部位選択の基準
・ 13から20個のアミノ酸の配列 ~ 数百アミノ酸
短いペプチドの場合(タンパク表面に出てこない領域を用いると、assayに使えないので予測が必要である。)
・タンパク質の親水性疎水性を予測し、親水性の強い領域を選択する。
N末端やC末端は特にタンパク質の外側に突出している可能性が高い。
・タンパク質の2次構造を予測し、α-へリックス領域を選択する。
・他因子とのホモロジーが低い
・(ペプチドを合成する場合)合成効率のよいシークエンス
今回数社のHPをチェックしてみたところ、いくつかの会社では20アミノ酸程度を推奨していた。
(ペプチド合成のためなのか?、あるいはその方が特異性が高いからなのか?)
2. 抗原ペプチドの作成法
・ 10~20残基 ペプチド合成を依頼する(BSA,KLHとの結合必要)
・ 数百アミノ酸 GST等のfusion タンパクとして自作。免疫から依頼
これまで当研究室ではGST-fusionとして数百アミノ酸を抗原として、泳動してgelから切り出し、もしくはセファロースから外した状態で、業者へ発送していた。
3. 抗体作成過程
免疫過程で抗体力価を調べてもらい、かつその時点でのサンプルをもらえるなら、抗体がどの程度使えるのかを知ることができる。自身でWestern 等を行い特異性が低いようなら追加免疫をしてもらう。
業者へのチェック項目
・ ELISAで力価を調べてくれるのか?別料金?
・ 経過sample をもらえるのか?
・ 追加免疫をしてくれるのか?
・ 受け取る血清はどのような状態になっているのか?
・ どのような保存方法が適しているのか?
4. 抗体の精製
・ 最終的な抗血清を必要なアッセイでチェックし必要に応じて精製する。
・ 血清の品質劣化を防ぎ最も安定なのは硫安塩析状態。硫安塩析状態の血清は、4℃または-20℃で保存。
・ 通常、免疫染色やウエスタンブロッティングでは、硫安塩析状態のまま適切な濃度のPBS等に希釈するだけで、血清と同様に使用できる。抗体を精製するなどの場合は硫安を除去(脱塩)する必要がある。
・ ウエスタンブロット等でノンスぺが多いならGST特異的な抗体の吸収、抗原特異的な抗体の精製を行ってもらう。
・ 精製済みの抗体は到着後、直ちに小分けし、-20℃または-70℃にて保存。