はじめに

 Northern blottingはmRNAの量、大きさなどを調べる最もオーソドックスな方法である。当研究室では、グリオキサールで変性させたRNAをアガロースゲルにて電気泳動・分離後、フィルターにトランスファーし、α32P[dCTP]で標識したDNA probeで検出する方法で行なっている。


概要
1. 電気泳動槽及びコームのH2O2処理、ゲルの作製
2. サンプルの調整(RNAの変性)、電気泳動
3. EtBr処理・酸性処理、ゲル写真撮影
4. トランスファー(Blotting)
5. グリオキサール解除・メンブレン処理
6. prehybridization, hybridization
7. メンブレンの洗浄・検出
8. トラブルシューティング

試薬
50×TAE (pH7.0)
Tris-hydroxymethl-amiomethane 72.2g
Sodium-acetate 24.6g
EDTA-2Na 5.58g
H
2O(MilliQ) to 500ml 酢酸にてpH 7.0に合わせる。

6×Dye (For RNA)
Bromophenol blue 25mg
10xTAE 6ml
glycerol 4ml
10ml

5% 過酸化水素水
H
2O2 (30%)・・・・・170ml 
H
2O (DW) ・・・・・830ml
1000ml

20×SSC
NaCl 175.3g
Na3 citrate・2 H2O 88.2g
H
2O (DW) to 1000ml

操作手順
1.  電気泳動槽及びコームの過酸化水素水処理、ゲルの作製 
電気泳動槽及びコームのH2O2処理
電気泳動槽、コーム、ゲル固定容器を5% 過酸化水素水に1 hr以上浸しておく。
(当研究室では、三角フラスコに室温で保存し、再利用している。)
DWでよく濯いでペーパータオルで拭き、乾燥させる。

ゲルの作製
1.2% Agarose (150ml)の作製方法
DW 147ml
50×TAE (pH7.0) 3ml
Agarose 1.8g
オートクレーブ(120℃、15min)もしくは電子レンジにてagarose-gelを作製する。
容器に注ぎ、空気が入らないようにコームをさす。
室温にて放置、ゲルが白く固まったら完成

2. サンプルの調整(RNAの変性)
RNAサンプルをエッペンにて調整する。
             standard Small scale
RNA sample(5~20mg) 5.6 ml 2.3 ml
10×TAE (pH7.0) 2.4 ml 1.0 ml
glyoxal 4 ml 1.7 ml
DMSO 12 ml 5.0 ml
             24 ml 10ml
・RNA sampleの容量はDEPC H2Oで合わせる
・10×TAE (pH7.0)はストックの50×TAE (pH7.0)をDEPC H
2Oで希釈して使用
・当研究室ではglyoxalをresinにてpHを調整した後、1.5mlチューブに100 mlずつ分注し、-80℃にストックしたものを用いている。またglyoxalのpH変化を防ぐため、glyoxalは一回使い切りにしている。

50℃ 1hr(きっかり),  on ice
6×Dyeを加えて、全量をapplyする。
パワーサプライにて60mAで約10分電気泳動した後(stacking)、50mAで2~3時間、電気泳動する。(ミューピットにて電気泳動後、ハイブリまでもっていっても問題はない。検出したいものに合わせてRNA量や電気泳動時間などの条件を変えること。)

3. EtBr処理・酸性処理
50mM NaCl/12.5ug/ml EtBr、室温にて20分以上処理
(金属バットにゲルを入れて静かにゆらす。)
0.2M sodium acetate (pH4.0) 、室温にて20分以上処理
(金属バットにゲルを入れて静かにゆらす。) 
写真撮影:scaleを横におく。=28S、18Sの位置から目的のmRNAの大きさをおおよそであるが、確認できる。

4. トランスファー(Blotting)
金属バットにゲルを入れて10×SSC Bufferで15分間静かにゆらす。図のようにブロッティング装置をセットする。8時間以上

5. グリオキサール解除・メンブレン処理
gene screen plus (メンブレン)上のwellの位置にボールペンで印を入れていく。
50mM NaCl にて15秒間処理=脱グリオキサール
1xSSC/0.2M Tris-HCl(pH7.5) にて30秒間処理
キムタオルの上で水気を切り、メンブレンを風乾させる。
このまま長期にわたり保存したいときには、prehybriの時間を通常よりも長く行なう。

6. Prehybridization / Hybridization
Prehybridization
55℃~65℃、prehy soln(1%SDS, 1M NaCl, 10% Dextran)中にて30分から60分処理
↓(Hybripackにメンブレンとprehy soln(メンブレンの大きさや実験による:5~20ml)を入れる(空気が入らないように)。
↓55℃~65℃のウオーターインキュベーター底にHybripackごと沈める。

Hybridization
↓プレハイ処理後、prehy solnを全て捨る(捨てずにやっても良い)。以下に示すhybri solnを加える。
hybri soln
ssDNA(実験系によるが、終濃度300ug/ulで行なっている。)
probe DNA (105cpm/ml以上)
prehy soln(1%SDS, 1M NaCl, 10% Dextran) 5~20ml        
↓メンブレンが入っているHybripackから空気を追い出し、シーラーで2重にして止める。
(空気が残るとその部分にprobeがhybridizationしなくなる可能性がある。)
↓新しいHybripackでさらに覆い、シーラーで2重にして止める。
↓55℃~65℃のウオーターインキュベーター底にHybripackごと沈める。
↓8時間以上(静置または穏やかにshake)

7. メンブレンの洗浄・検出
実験の目的やprobeの良し悪しにもよるが、当研究室では以下の試薬・条件を標準的なWashingの条件としている。
↓2xSSC, RT, 5min with shaking(2回)
↓2xSSC/1%SDS, 55℃~65℃,10~30min
(Water incubator上に金属バットに洗浄液をいれて) (2回)
↓0.1xSSC, RT, 5~15min shaking(2回)
検出










オートラの場合
(メンブレンをラップに包み、増感紙を用いて-80℃で数日間、X線フィルムで感光させる。)
イメージングプレートの場合
(メンブレンをラップに包み、イメージングプレートに感光させ、Tyhoon8600やBAS2000にて検出を行なう。)

トラブルシューティング
問題があれば、以下の事を確認する。
プローブが高い比活性で標識されているか?
RNAサンプルの状態はどうか(トラブルの原因はここにあることが多い)?
→EtBr写真で確認したrRNAのバンドの比率が28S:18S=2(3):1くらいなら良い。
RT-PCRなどで目的のRNAの存在を確認する。
自分の目的の遺伝子をノーザンで検出したpaperがないか調べてみる。マテメソ熟読!
Probeの相同性に見合ったhybri・washing条件を組み立てる。(塩濃度や温度)
Probeに反復配列やGCが多い配列が含まれていないか?
設計したprobeが目的の遺伝子特異的かどうか? データーベース等で調べてみる。