In vitro ubiquitination assay(松崎 仁美)
ユビキチン(ubiquitin)は進化的によく保存された 76 アミノ酸からなるタンパク質である。あるタンパク質のリジン残基がユビキチン分子との共有結合によって修飾されることはユビキチン化(ubiquitination)と呼ばれている。細胞内の多くの因子がユビキチン化修飾を受けることが報告されており、良く知られているように、ポリユビキチン鎖が 26Sプロテアソームへのターゲットシグナルとなってタンパク質の選択的分解を制御していることに加え、最近では、ユビキチン化が DNA 修復、エンドサイトーシス、アミノ酸輸送、タンパク質の翻訳などの制御に関与していることも明らかにされ、ユビキチン化は生物の様々な高次機能の制御に非常に重要な役割を担っているといえる。
タンパク質のユビキチン化はユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)およびユビキチンリガーゼ(E3)の連続的な触媒作用によって起こり、これには ATP のエネルギーが必要である。ここでは、ウサギ網状赤血球の細胞抽出液がユビキチン化反応に必要な因子群を豊富に含むことを利用した、簡易的な無細胞反応系についてふれる。
操作
基質タンパク質の調製
・動物培養細胞に発現ベクターをトランスフェクトし、免疫沈降により精製する
・GST 融合タンパク質として大腸菌内で発現させ、精製する
などの方法がある。
これらはビーズに結合したまま以下の反応を行う。
ユビキチン化反応
↓ビーズに結合した基質タンパク質を、反応バッファーで平衡化する
↓以下のものを混ぜる
・基質タンパク質
・反応バッファー (50 mM Tris-HCl (pH 7.5), 10 mM MgCl2, 0.5 mM DTT)
・33% (v/v) rabbit reticulocyte lysate*
・必要に応じて
・ubiquitin (GST-ubiquitin でもよい)
・2 mM ATP
・ATP regenerating system
(10 mM creatine phosphate, 10 IU/ml creatine kinase, and 1 IU/ml inorganic pyrophosphatase)
・20 uM MG132
を加える
↓30 ℃ で 1 時間反応する
↓1% Troton X-100 を加えた反応バッファーで十分良く洗う
↓検出
(基質タンパク質に対する抗体や抗ユビキチン抗体を用いた、ウエスタン・ブロッティングなど)
* crude rabbit reticulocyte lysate (Promega) など